柴 和彦さん(箕輪町)の生活の身近に渓流の癒し

渓流を泳ぐアマゴやイワナ 躍動感に満ちた木彫で表現
自然豊かな箕輪町で育った柴和彦さんは子どもの頃から、地元の里山へ分け入っての渓流釣りが大好き。「いつも身近にアマゴやイワナにいてほしい」という思いが募って独学で始めた実物大の渓流魚の木彫は、既に15年以上のキャリアとなりました。


1本の材を用い、まず木工機械でモチーフのフォルムを粗く形作った後、躍動感に満ちた姿を彫り出していく技に日々磨きをかけています。彫刻刀のほか、うろこ作りには微細な穴が彫れる工具のリューターを駆使。規則正しく並んでいる細やかなうろこを、根気強く掘り進めていきます。
仕上げでは木肌をそのまま生かす作品もありますが、彩色する場合はアクリル絵の具を用い、背から腹にかけての微妙なグラデーションはエアブラシ、体側のパーマークや点は絵筆や綿棒を巧みに使って表現しています。
「豊かな自然環境を後世に残したい」
熱い気持ちを込めて作品に命を吹き込む
今回は、米ヒバを用いたアマゴの創作風景を取材。
終始集中し、命を吹き込んでいくかのように木の塊と相対していました。


「渓流魚に限らず、たくさんの尊い命を育み、つなげていってくれる豊かな自然環境を後世に残していかないと、という気持ちを込めて創作しています。どの工程も重要。確実に一工程ずつこなしていかなければ、満足いく結果は得られません」。
その言葉には作家としての自負がのぞいていました。

柴 和彦 さん
1952年、箕輪町生まれ。
長年勤めた製造業の会社を早期退職し、町内に56歳から工房「渓の奏(たにのメロディー)」を構えて木彫の道へ。県工芸美術会理事も務める。
製造業の特級仕上げ技能士の国家資格も所持。