大槻 稔さん(箕輪町)の“職人技が生み出す美しき建具”
ごくわずかなズレも命取りに 緻密な技術の結晶の組子細工
機能性と美しさを兼ね備え、建物の趣を引き立てる木製建具。寸分の隙間もなく組まれた継ぎ目の正確さや木肌の滑らかさをはじめとして、凛(りん)としたたたずまいの奥には、長年にわたって研ぎ澄まされた職人の技が宿っています。
箕輪町の建具職人大槻稔さんは、2024年2月に開催された厚生労働省など主催の第32回技能グランプリの建具職種で厚生大臣賞を受賞。日本一に輝きました。
同職種では全国から選抜された職人たちが技を競い、与えられた材と指定の工具を使用して12時間以内に、課題のついたてを作りました。デザインは自由。大槻さんが施したのは木曽ヒノキとサワラを用いた「三重菱(みえびし)」の組子細工。組子は細かく削った木片を組み合わせて文様を構成する工法で、0.1㎜のズレも許されない緻密な技術力の結晶。群馬県に暮らす卓越した技能者「現代の名工」高田年三さんに師事しながら鍛錬し、技術を身につけました。
今までにない文様の創造を!伝統工法の新たな道の開拓に挑戦
「経験を積むたびに伝統工法の奥深さや鋭さに打ちのめされますが、同時に新たなモノを生み出したい思いにも駆られます。組子細工の今までにない文様を生み出すなど、今後も人がやっていないことに取り組んでいきたい」。穏やかな語り口の中に情熱を秘め、きょうも材と向き合っています。
大槻 稔 さん
1978年、箕輪町生まれ。県伊那技術専門校で木工を学び、父親が営む大槻木工所へ入職。以来、一般住宅用の建具などの造作に打ち込む一方で、伝統工法の技を習得しながら新たなモノづくりの可能性に挑んでいる。